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トラフィック・パターンを飛んでみましょう

実機で飛んでいる風景を撮影できるほど余裕のあるプロシジャーではありません。そこで、実際にトラフィックを飛んでいる感じをパソコンのシミュレーターを使って再現・解説してみましょう。


パイロットにとってはトラフィック・パターンを飛ぶというのは非常に神経を使い、且つ沢山のことを同時に考えるプロシジャーです。速い飛行機になればなるほど、トラフィック・パターンの各レッグ(ダウンウインドやベースなどの各箇所)は素早く過ぎていってしまいます。早め早めに操作を済ませていく必要がると同時に、常に自機が滑走路に対してどこに位置しているかを把握しておく必要もあります。さらに、トラフィック・パターンの本来の趣旨を考えてもお分かりのように、同じコースを他の航空機が飛行している場合も十分にあります。空中衝突を避けるためにも見張りは大切なパイロットの責務になってきます。

今回の「BRIEFING」では、実際のトラフィック・パターンのフライトを飛びながら撮影することが危険であることから、マイクロソフト社のフライトシミュレーターを活用して実際の要点を再現して「飛んで」みました。トラフィック・パターンの要素、何を考えながら飛んでいるかの参考になれば幸いです。

始める前に、主な基本要素をまとめておきます。

  1. 使用するのはシミュレーターにデフォルトで入っているセスナ182。高翼機です。
  2. トラフィック・パターンは900フィートで周ります。(本来は800フィートが基本)
  3. 長崎空港の14番滑走路から離陸し、右旋回。西側のトラフィック・パターンを飛んでみます。
  4. トラフィック・パターンの説明ですので、「外部点検」やその他で直接関係の無い内容は省きます。

まずは機体が滑走路のセンターライン上に真っ直ぐになっていることを確認します。

1.操縦席から前を見たときに、滑走路のセン
  ターラインの白い線の延長線上に飛行機
  の機首が向いていることを見ます。

2.この例では14番滑走路ですから、方向を
  示すコンパスや方向指示器なども方位
  140度を示している事を確認します。

通常の離陸を行い、通常の上昇をします。

滑走路の延長線上を真っ直ぐに上昇し、高度が約500フィートに到達するあたりで右に旋回します。旋回の角度は機種や速度によってことなりますが、15度〜30度の角度で旋回をすると丁度良いでしょう。この角度は後でも使うので、しっかりと覚えておきます。

離陸した滑走路の方位が140度、右(西)に90度の旋回ですから、方位は230度の方向を目指して飛んでいきます。

さて、左の画像を見てください。離陸してきた飛行機は滑走路を直角に離れていきます。トラフィック・パターンのレッグ名でいうと「クロス・ウインド」を飛んでいることになります。
クロス・ウインドで約800〜900フィートに到達するあたりで右に旋回。今度は離陸してきた滑走路と平行に、逆方向に向かって飛んでいきます。高度も水平飛行、900フィートをキープします。方位は離陸と逆方向ですから、320度ですね。

トラフィック・パターンでいう「ダウン・ウインド」です。

重要ポイント:
先ほど、滑走路の延長線上からクロス・ウインドに右旋回する際に使った旋回角度(バンク角)と同じ角度で旋回をしましょう。
左の画像が操縦席から右を見た時の感じを伝えています(実機も似た感じですよ)。高翼機を使っていますので、翼を支える「棒」がありますが、滑走路と「棒」が重なる箇所がありますよね?(赤い丸で印たところ)常にこのあたりに滑走路が位置するように飛べば、滑走路と飛行機との距離間隔が維持できます。

ちなみに、方位を維持することも大切。正面を見ながら、また右を見て滑走路との間隔も近づいたり遠ざかったりしないように。

ポイント:
ダウン・ウインド(滑走路と平行に飛ぶ)ですが、滑走路が飛行機の右側に見えますよね。ということで、「ライト(右)・ダウン・ウインド」と呼びます。滑走路が飛行機の左側に見えれば「レフト(左)・ダウン・ウインド」です。
高度計は900フィート。(赤印)
方位は320度。(黄印)
昇降計を見ても水平状態。(紫印)
速度は約105ノットです。(青印)
滑走路の端が飛行機の右斜め後ろのあたりにさしかかります(右斜め後ろを見ればわかりますよね)。

ここで右旋回。さっきから使っている旋回角と同じバンクで90度旋回しましょう。着陸する滑走路は方位140度、それに対して90度の直角度で向かうわけですから、方位はダウン・ウインドの時の320度から50度になるはずです。

高度はまだ900フィートを維持します。
右旋回を50度で水平にすれば、操縦席から滑走路は左の画像のように右斜め前に見えているはずです。

トラフィック・パターンでいう「ベース」です。滑走路が飛行機の右に見えているということで、「ライト(右)・ベース」と言います。
ライト・ベースを飛びながら、飛行機の速度を落としたり、高度を下げはじめて、着陸の態勢を整えていきます。
着陸する滑走路の手前延長線上を目指して右旋回を開始します。常に滑走路を見ながら旋回していきます。
もうすこし右に旋回すれば滑走路の延長線上、トラフィック・パターンでいう「ファイナル」です。

速度が遅くなりがちな箇所ですから、速度計には頻繁に目をむけましょう(チラチラっと見る程度)。左の例では75ノット程度。高度は約300フィート。
これで無事に着陸です。
最後まで気を緩めずに。
最後に。
トラフィック・パターンは飛行機の性能によって、実際に飛ぶコースと滑走路の間隔や高度が異なります。今回はあくまでも単発小型機(高翼機)の見本です。多発機やジェット機は若干ですが異なるコース・高度を飛ぶことになります。