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2003年10月 4日

奈良盆地から西方面を見る。街には少しずつ明かりが。

パイロットが安全に着陸できないと判断した時は直ちに着陸を断念し、着陸体勢から上昇体勢へと機体を操作することを「ゴーアラウンド」と呼ぶ。訓練飛行などでは単発プロペラ機からジェット旅客機までの全ての段階で熟練する操作である。訓練では数多く練習する「ゴーアラウンド」でも、実際の運航時にゴーアラウンドをしないといけない場面にはなかなか出くわさない。数多く旅客機で出張や旅行をしてきた私も、1度だけ羽田空港に着陸するボーイング777で経験した程度。ましてや小型機で訓練以外のシチュエーションでゴーアラウンドをする必要を感じた事は今までに記憶に無い。

今晩はちがった。それも小型機に乗るのが初めてという2名のお客さんを乗せていながらである。

伊豆大島を楽しんで八尾に帰航するフライト。風は真北から13ノットと決して弱くはない横風に変わっていた。日没後には八尾空港のB滑走路(北風用)は照明施設が無いために使用不能。A滑走路に横風修正をしながらの着陸となる。普通はこの程度の横風であれば問題なく着陸できるのだが、今晩は着地点から0.5
マイルの間の風速、風向が非常に暴れていて定まらない。機体も速度が一定に落ち着かず、高度も上がったり、下がったりと低高度では少し気になる揺れを伴った。滑走路のスレッシュホールド(端)まで来て断念、ゴーアラウンドをした。パワーが足されスピードが増す。高度も上がっていく。アプローチが安定していなかったので、無理に着陸をするよりも再度のトライを選択したわけだ。2度目のトライもファイナルアプローチ中には1回目と似た揺れはあったが、1回目の雰囲気を経験しているために修正をしながらアプローチ。速度は少し速めに、高度はあまり高く押し上げられないように・・・そして無事着陸。

1回目のゴーアラウンドが本当に必要だったか・・・降りてしまうと考えさせられる。「本当に降りれなかったのか」を考えすぎるよりも「2回目の参考になる良いアプローチだった」と思えば今までの訓練の成果が発揮できたとも言える。

いずれにしろ、初めてと言える「マジ」ゴーアラウンド。小型機初めてのお二人はちょっと「ビビッた」数分間だったろう。