1999年11月21日

ダッチハーバー - ペトロパブロフスク

 アラスカの先端、ダッチハーバーで一夜を過ごしたかずちゃんはいよいよ日本に向けて最後のフライトに入ります。とは言ってもまだここから日本までは2000マイル以上残っており、もちろんダッシュ8では届くわけもありません。この区間はずいぶんいろいろと検討を続けてきたのですが、ハワイまでも届かず、FSデフォルトの空港だけではどうしても世界一周を完遂することができません。地図を見ますと、ロシアのカムチャッカ半島にペトロパブロフスク=カムチャツキーという比較的大きな街がちょうど中間地点辺りにあり、デフォルトのFSではこの場所にNDBだけが設置されています。そこでここだけはルール違反ですが、ペトロパブロフスクのアドオンの空港を給油に使わせていただくことにしました。

 この地のシナリーにはTim Vasquez氏の作られたPetropavlovsk-kamchatskiy scenery (petro.zip)を使わせていただきました。ぽつんとBGLファイルが一コ入っているだけなんですが、送電線や港に浮かぶ船などなかなか細かいところまで気合いが入って作られています。ただインストール方法などの説明がなく、ふつうにインストールするとレイヤーの関係で滑走路が浮かんでしまうなどの不具合がでるため、結構大変でした。また海のそばの空港なのになぜか着陸してみると高度が1633フィートもあります。シナリーの中の設定の問題のようですが、詳細はわかりません。いずれにせよこの地のシナリーは私の知るかぎりこれしか見つかりませんでしたので、ぜいたくは言えません。

 ウナラスカからペトロパブロフスクまでは直線でも1236.6マイルもあります。以前試したときにはダッシュ8の航続距離はやっと1300マイルというところでしたから、今回はギリギリのフライトです。向かい風だと危ないかもしれませんが、あいにくATISも利用できず、情報はありません。とにかく燃料は目一杯積み、あとはエンジンを無駄にふかさないようにして飛ぶだけです。

好天のウナラスカを離陸する

 よく晴れたウナラスカ空港の現地時間0800、エンジンに火を入れます。とにかくこの旅で一番長い距離を飛ばなければならないので、今日はかなり緊張しています。またここからの途中の島のどこかにとおるさんがアラスカ巡りを続けておられるはずです。野村さんの時のようにご挨拶をとも思っておりましたが、お互い地方をフライト中のためか、残念ながら連絡をとることができませんでした。上空から旅の安全をお祈りすることにします。愛機はRWY30から西の空に向けて飛び立ちました。

 離陸すると直ちにスロットルを絞りクライムパワーでFL180まで上昇します。レベルオフしてからはN1を80%近くまで絞っての巡航とします。これまでの経験からさらにエンジンを絞ると急に速度が低下することがわかっています。N1が80%でおおよそマッハ0.5程度の巡航速度はでます。また燃料消費量は650ポンド/時間程度です。あとは向かい風が吹かないことを祈るのみ。

ベーリング海上空を飛ぶ

 アリューシャン列島は緩い弧の字を描いていますので、限られた燃料では島伝いに飛ぶことはできません。GPSでダイレクトにペトロパブロフスクへ進路を取ると、左手に霞む島影に向かって翼をバンクさせて、とおるさんの旅の無事を祈りました。下界は一面にベーリング海が広がっています。さほど揺れもなく巡航速度から見てもどうも風は強くないようです。ラッキー!

 途中は全く島影も見えず、ひたすら燃料計とにらめっこしながらフライトを続けます。次第に下界は雲が広がってきて、とうとう海すら見えなくなってしまいました。単調なフライトを続けること4時間あまり。もう燃料がずいぶん寂しくなってきたころ、ようやくペトロパブロフスクのNDB 535MHzを受信しました。ここからは降下の際にエンジンを絞れば何とか燃料は持ちそうです。

カムチャッカ半島上空を飛ぶ

 7000フィートぐらいに広がる雲海の下にでるとそこはもう陸地が広がっていました。すでに機はカムチャッカ半島の上空に到達しているようです。NDBを目指してフライトを続けます。右手には山脈が迫っています。

ペトロパブロフスクの街並み

 山並みを越えると左手にペトロパブロフスクの街並みが広がってきました。正面には滑走路もインサイトすることができました。シナリーに同封されたアプローチチャートに従い、一旦南下したのち左旋回でRWY 34Rにアプローチします。

ファイナルアプローチ。

 海に面した街並みから空港までは高圧線の鉄柱が並んでいるのが見えます。ATISもなく、NDBだけを頼りに完全にビジュアルだけでアプローチをかけます。もうまもなく着陸です。

ちょっと寂しい空港風景

 現地時間1337、愛機はカムチャッカの地に無事着陸しました。スポットインして辺りを眺めると、とおるさんがすでに書いておられるように何となくどこそこ寂しくて、これまでたくさん降りてきたアメリカ国内の空港とはずいぶん趣きが違います。ハンガーなどもいかにもロシアっていう感じです。エンジンを止め燃料計を見るともうほとんど残っていません。満タン950ガロンのうち、910ガロンを使い切った勘定です。着陸に失敗してもゴーアラウンドの予備燃料はおそらくなかったでしょう。本当にストレスのかかる4時間37分のフライトでした。

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